はじめに ファラデーの単極誘導の現象を取り上げている教科書は簡単にふれる程度であったり、それなりに詳しく書かれた参考書を読んでも分かりにくいものが多い。 当方も詳しく解説された資料やサイトを読んで、よく分からなかった。 同様に、単極誘導を理解できないと感じている方も多いと思われる。 そもそもファラデーの単極誘導の現象について、一般的にはあまり理解されていない上に、2013年8月13日当サイトに掲載した「ファラデーの単極誘導モーターに生じる力の解析pdf」では、各々の実験間でのつながりが分かりにくかったことから、当方が伝えたかったことが旨く伝わっていないと感じた。 そこで、上記の論文において省略した幾つかの実験を再度実施した上でビデオに撮影したので、動画を交えながら順を追って詳しく解説する。 ファラデーの単極誘導とは まず、一般的に解説されているファラデーの単極誘導の現象について、以下に記す。 端面を磁極とする円柱状磁石(図の例では上面をS極とする)に対して、同軸上の導体円板を配して軸回りに、上から見て時計方向に回転させると、中心軸と円板の外縁部に誘導起電力(中心軸がマイナス、外縁部にプラス電圧)が生じる。 このとき、
この現象は、イングランド人のマイケル・ファラデーが1821年に単極誘導モーターを考案し、1832年に単極誘導発電機を製作したことで、発見した現象をいう。 ファラデーの単極誘導の現象は、「続 間違いだらけの物理概念:パリティブックス・丸善(株)1995年」に詳しいので、一部引用する。ファラデーの単極誘導による起電力は式1によるとされる。 式1は、左辺は誘導される起電力の電圧である。右辺の第1項は、回路を貫く磁束密度Bの面積分の時間変化である。単極誘導では磁束密度に変化がないため、第1項はゼロである。 第二項は、線積分であり、磁束密度Bを横切る方向に速度vで運動する回路があると、回路に起電力が生じることを示している。 第2項が単極誘導になる。 式1の説明では、3番目の項目が理解できない。円柱状磁石が導体円板と一緒に回転したのでは、回路を貫く磁力線は、磁石に固定されていて「磁石とともに回転するのか」、あるいは「磁力線は空間に固定されているのか」という疑問に当たる。 ファラデー単極誘導の説明には苦労されているけれど、こちらとこちらに詳しい。 まず、単極誘導による直流発電の実験を示す。 ファラデーの単極誘導の起電力 銅円板をリング状のネオジム磁石2枚で夾んだものをモーターの回転軸に取り付けた。 直流モーターは模型用の540モーターを使い、回転をpwm方式で制御する。 手前方向がS極で時計方向に回転するようにセットした。 起電力の計測にはガルバノメーターを用い、銅円板の回転軸にはマイナスを、外縁部にはプラスを接続した。 因みにブラシは導電糸を用いた。この導電糸は、微少電流を流すときには耐久性があり甚だ具合がよい。 この実験は、3項目目 「磁石と円板を一緒に回転すると誘導電流が流れる」に該当する。 ある本には「このことから、磁力線は磁石にくっついて一緒に回転するのではなく、空間に固定されていることがわかる」と記載されているけれど本当だろうか。 起電力が生じるならば、逆に回路に電流を流せば回転するはずである。これが単極誘導モーター実験1である。 実験1 この場合において、銅円板はベアリングを介して台で支えてあり、自由に回転する。 電源の設定は直流5.0V、最大30アンペアであった。 実験1も3項目目と同じ設定であり式1の第2項に矛盾するように思える。 次に、上記、1項目目に相当する単極誘導モーターの実験1−1を行った。 実験1−1 銅円板を支えるベアリングは鋼鉄でできており、ネオジム磁石にくっつこうとすることから銅円板の回転に若干抵抗がある。 これならば、式1のとおりと納得するだろう。 ここまでが前提である。 実験1及び実験1−1では、閉回路を貫く磁力線が問題であった。 これは、ローレンツ力と同じ考え方である。 ローレンツ力とは、荷電粒子(この場合は電子)が磁場中で運動するときに受ける力のことである。 磁場中にある導線に電流を流すとき導線に力が生じる。 2つの実験では閉じた回路を流れる電子が磁場(磁界)から力を受けると考えられてきた。 本当に、単極誘導モーターの力が生じるのは閉回路の流路に生じるのかどうかを試したのが、次の実験1−2である。 実験1−2 後半のスローモーションの動画に注目されたい。 銅円板の外縁部に接したスズメッキ線(+)が画面向こう方向(反時計方向)に弾かれるとともに、やがて銅円板が時計方向に回転し始める様子が見て取れる。 単極誘導の現象を紹介したあるサイトでは、「銅円板の回転による反作用が何故か消滅してしまう」と述べているけれど、誤解である。 この問いは、電流が流れる導体回路に力が生じていると決めてかかって観察しているから故の疑問であろう。 実際は手に持った鰐口クリップが銅円板の反作用を受け止めているのである。 従って、単極誘導モーターに生じる力は、ブラシ接点に生じているのである。 作用と反作用は成り立っている。 このことをもう少し明確にするため、実験1−3を行った。 銅円板の回転軸にクリップ(−)を取り付けて、銅円板が回転しないように固定した上で、外縁部にスズメッキ線(+)を接触させた場合を示している。 実験1−3 スローモーションで分かるように、スズメッキ線は銅円板に接触して電流が流れると、画面向こう方向(反時計方向)に弾かれた後、元の位置へ復帰するという動作を繰り返し、その結果スズメッキ線は振動する。 ファラデーの単極誘導モーターに生じる力は、閉じた回路を流れる荷電粒子(電子)や導体に生じる訳ではなく、接点または接触する面に生じていることが分かる。 また、生じる力は、磁極あるいは磁力線と直交する方向に生じていて、結果的に回転トルクを生んでいることが分かる。 次に、銅円板の回転軸に取り付けたクリップ(−)を銅円板の外縁部へと移したものが、論文でご紹介した実験3である。 実験3 この動画は、上記までの実験と電源の接続が+−逆になっている。従って、銅円板に触れたスズメッキ線は実験1ー3と逆方向に弾かれている。 ここで重要なことは、流れる電流の経路が回転軸の中心を通っていないことである。 実験の結論として言えることは、「ファラデーの単極誘導モーターに生じる力は、電流の経路に関係がない」ということである。 幾度か実験を繰り返すうちに、この点を意識しなくなって論文では、この実験事実を説明・解説しなかった。 ところで、単極誘導モーターに生じる力は、磁石とどういう関係にあるのか分からなくなったことと思う。 実際やってみれば分かることだけれど、接点に生じる力は磁石から遠ざかるにつれて弱くなる。 次の動画がそれである。 実験4の為に撮影したもので、これまでの動画と条件が異なるけれど、円柱状のアルニコ磁石を遠ざけると弾かれなくなり、近づけると大きく弾かれることが分かる。(実験4−1) 注意:これまでの実験で気付くように、接点は焼き付きを起こしやすく、弾かれることで振動を(安定して)続けることが困難である。 生じる力の強さはスズメッキ線の弾力性によって、弾かれる大きさ(変位)に比例するけれど、実験の最初から最後まで接点を安定させることは、かなり難しい。 実験4−1 ここまでに、概ね確認したことをまとめると、ファラデーの単極誘導モーターに生じる力は
運動の相対性 拙著弧電磁気論でも書いたことであるが、意外と運動とはどういうものか理解されていないようなので、改めて記す。 ある科学者の言葉を一部引用する。 「宇宙空間を進行している二個の惑星のそれぞれに、一人ずつ観測者がいるとする。この惑星はいわば光速の半分で動いているとする。しかしどれも等速度で平行に進行している。もし宇宙空間に他の天体が存在しないとすれば、二人の観測者は当然のことながら自分たちの惑星は運動エネルギーをもたないと考えるだろう。なぜなら二人の関係位置が同じエネルギー・レベルにあるからだ。そこで三番目の惑星を置いたとして、これが空間に静止しているとすれば、二人の観測者は自分たちの惑星が相関的には運動エネルギーを持たないのに、第三の惑星に関してはすさまじいエネルギーをもっていると感じるだろう。しかし実際にはどの惑星が動いているかを決定する方法はない。ただ、惑星間に相対的な運動または異なるエネルギーがあるといえるだけである。」 改めて、運動の相対性と言われても当たり前過ぎて普段は意識しない。電車の窓から見える隣の電車が動いているのか、こちらが動いているのか分からないという錯覚するときくらいである。 何も今更、19世紀的な見方をする意味はないと考える向きもあるだろうけれど、一つ大事なのは、運動の相対性とともに「エネルギー」も相対的なものであるという指摘である。 宇宙・自然が孤立系と捉えたときにはエネルギーの量は保存するだろうけれど、開放系と考えた場合は、保存しないと同時に、エネルギーも相対的なものであると気付く。 そして、全ての物体の運動が静止したとき、絶対零度が最もエネルギーレベルが低いと誰しも考えるけれど、もしかしたら絶対零度さえも音速のように一つの閾値に過ぎないのかも知れない。 この運動の相対性が単極誘導モーターに生じる力と何の関係があるかと問いかけられる訳だけれど、円運動も相対的な観点から説明する必要がある。 宇宙空間に観測者がいる惑星1とともに静止した惑星3がある。惑星2は惑星3を周回する楕円軌道にあるとする。もし、宇宙空間に他の天体が存在しないとすると、観測者には惑星2が惑星3を周回しているとは認識できない。 惑星2と惑星3の近日点と遠日点の差の距離を近づいたり離れたりするように見えるはずである。ここで、惑星1と惑星3に静止した惑星4を置いたとする。ここで初めて観測者は、惑星2が惑星3を周回していると認識できる。 我々が天体を観測するときも、研究室で物体の運動を観察するときも周囲に惑星4に相当する物体が存在するからこそ「運動」が認識できるのである。 それは、巨大な粒子加速器でさえも同じ事情にあるはずであるから、地球の地下に埋設された加速器に観察される粒子も地球の運行による固有のエネルギーレベルにあることになる。 この意味で、「私たちはエネルギーの量の正しい測り方を知らない」といえそうだ。 さて、話しを元に戻すと、永久磁石は、磁区をもっている。磁区内では磁石を構成する原子の向きが概ね揃っており、全体として永久磁石を構成している。見方を変えると永久磁石は「超巨大な単原子」と同じであるといえる。 この考え方は量子力学からは出てこないことだろう。 実験で使用した磁石は、ネオジム磁石やアルニコ磁石である。ネオジム磁石の材料は、ネオジム、鉄、ホウ素。アルニコ磁石の材料は、アルミニウム、ニッケル、コバルトなどであるから、これらの原子が概ね磁極の方向に揃うことで磁石を構成している。 円柱状の磁石や棒磁石は、軸対称であるからほぼ均質であろう。 超巨大な単原子である磁石は、回転しているのか、静止しているかを観測者からは認識できない。 磁力線が磁石にくっついてるのか、空間に固定されているのか判別できないのと同様の事情にある。 ここで、ファラデーの単極誘導モーターに生じる力が、磁石の近傍に設けられた接触面にある電子と磁石の中心部、具体的には磁石の重心位置にある(超巨大な)原子との相互作用だと考えれば、最初に記した1項目目から3項目目までの条件を満たす。 そして、電流の経路には関係が無く、磁石からの距離に逆比例する力を接点に生じることになる。 磁力線が原因だと考えると訳が分からないことになるのは当然のことである。もともと磁力線とは関係がなかったことになる。 「磁石とその使い方」谷越欣司著:日刊工業新聞社p37図1.34に加筆修正 脇に逸れたけれど、実験を続ける。 実は、実験4−1において、段階を一つ飛ばしている。 実験4−1は単極誘導モーターに生じる力が磁石からの距離に逆比例することを示したものであった。 実験3の続きである。 実験3に用いた銅円板の近くにベアリングで支えた銅円板を置く。2つの銅円板は接していても、僅かに離れていても構わない。 実験3で示したように銅円板の外縁部にクリップでマイナスを接続する。次いで、2つの銅円板を別の導線で繋ぐ。 そして、クリップ(+)で保持したスズメッキ線を右側の銅円板、磁石の近傍に接触させる。 実験3−1 スズメッキ線は弾かれる力が生じていることが分かる。 次に、実験3−2ではマイナス端子を右側の銅円板の回転軸につないで、同じくスズメッキ線が弾かれることを示した。 磁石は接点の近傍にあるだけでよい。左側の銅円板には、電流が流れる必要もないことが分かる。 実験3−2 これでようやく論文に示した実験2に到達した。下の動画、実験2では、プラスとマイナス端子の接続が逆であるから回転方向も逆の反時計方向となる。 但し、実験2には、式1の第1項に相当する力が生じている。つまり、右側の銅円板は、回転するにつれて、左側に置いてネオジム磁石の磁力線密度の変化にさらされる。右側の銅円板には渦電流が生じることで、エネルギーが熱として消費される。 その結果、実験2の回転は、実験1よりかなり弱い。実験2の撮影時には、たまたまブラシは焼き付きを起こさなくてスムースに回転した。 実験2 単極誘導モーターに生じる力の磁極方向の分布について それでは、ファラデーの単極誘導モーターに生じる力の「強さ」は、磁石の周囲にどのように分布してるかが焦点となる。 このことを検証するまえに、2013年8月13日掲載した「弧電磁気論による中性子を含まない原子模型とファラデーの単極誘導について(考察)」を参照されたい。 この論文でもいったい何が言いたいのか分からないと言われるかも知れないけれど、要するに 「弧理論の原子模型は、ファラデーの単極誘導の現象によく似ている」ということである。 仮に弧理論の原子模型がファラデーの単極誘導の現象と原理が同じならば、「ファラデーの単極誘導モーターに生じる力の分布は磁石の重心に近ければ近いほど強いはずだ」という予想を立てたのである。 これまでの実験によりファラデーの単極誘導モーターに生じる力は、スズメッキ線の弾かれる変位に比例するし、電流は磁石の回転軸を通る必要はないことが分かっているのだから、磁力線あるいは磁極の方向に沿ってスズメッキ線の弾かれる様子を観察すれば良いことになる。 これが下記ビデオの実験4である。 単極誘導モーターに生じる力の解析 の実験4を参照 実験4の結果、予想の通り単極誘導モーターに生じる力は、円柱状磁石の中央部分(磁束密度がほぼゼロ付近)で最も強かった。 磁極の両端でも弾かれる読み値は大きかったけれど、これは実験7の観察と併せて式1の右辺、第1項目に相当する部分、磁場(磁界)中を電流が流れるとき導体に力が生じた結果であると結論付けた。 ところで、実験4においてスズメッキ線の接点に生じる力を測るとき、実験データに最大振れ幅を採用したのは、下記の理由による。 磁極断面を4つに分割し(1)〜(4)として、S極を原点とした。S極からN極へ向けての座標を(−10)と(0)、(19)・・・(160)までの9カ所×4のスローモーションビデオを観察したところ次のようなことが分かった。 磁石中央部分(磁束密度がゼロ付近)である(1)75ミリ、(2)75ミリ、(3)75ミリ、(4)75ミリでのビデオにおいては、いずれも火花放電が起きたときは、振れ幅が小さかった。 火花放電が起きないときには振れ幅が大きく、生じる力は強いことが分かった。 一方で、(1)−10ミリ、(1)160ミリ、(2)−10ミリ、(2)160ミリ・・・など、N極・S極、両端での振れ幅の観察では、火花放電の有無と振れ幅には相関がなかった。 そして、磁極の両端においては、接点に電流が流れた際にスズメッキ線は「たわみながら」振動を繰り返しているのに対し、磁石中央部(磁束密度ゼロ付近)において、スズメッキ線は「たわむ」様子は見られなかった。 このことは、磁極両端に於いては、スズメッキ線が接点に触れて電流が流れたときに、導体であるスズメッキ線に力が生じたためと思われる。 まとめたものが実験4−2である。 補足の実験 4−3 ファラデーの単極誘導モーターにより生じる力が接点に生じていると判断した根拠が弱いと感じることがあり、当該論文をサイトに掲載後、次の実験を行った。 直流高電圧を用意し、アルニコ磁石の磁石中央付近(磁束密度がゼロ付近)、及び磁束密度が高いS極付近の2カ所において、放電の様子を観察した。 放電の距離は最大2cm程度であった。 電源は、AC100Vをスライダックをとおして、ネオントランスで高電圧にする。これを高耐圧ダイオードで脈流にする。擬似的な直流とした高電圧を円柱状アルニコ磁石の磁束密度が低い中央部付近で放電させた。 続いて、磁束密度が高いS極付近で放電させる。 中央部付近においては、放電は電極間をほぼ直線で通った。 一方のS極付近での放電は、磁場により曲げられた。 アルニコ磁石の中央部付近での放電では空中を放電中の電子に力が生じていない。 と同時に実験4及び実験7の結果からファラデーの単極誘導モーターに生じる力は磁石の重心に近いところの方が強い訳であり、かつ実験4−3の結果と合わせると、単極誘導モーターに生じる力は接点に生じていると判断できる。 さて、磁石中央部で火花放電が起きないときに単極誘導モーターに生じる力が強いという現象は、クリーンエネルギー研究所、所長井出治氏より報告されている現象に似ているので一部引用する。(未知のエネルギーフィールド、「共振回路とフリーエネルギー」p190、世論時報社、1992年)より「超効率を記録したエーテルエンジンの特性」について 「機械的エネルギーを引き出した方が、機械出力がゼロの場合よりコンデンサーの逆充電電圧が上昇する」とあり、その際「この逆転現象が起こるときに限って、スイッチSの接点で生じる火花放電の音が異様に低い音と」なる。しかも、その現象は、「数回の試行に対し一度の割合で」起きたことが報告されている。 つまり、引用文の「機械出力」を「スズメッキ線の弾かれる力」に対応させ、「火花放電の音が低い」ことを「接点Aで火花放電が起きない」ことに対応させるならば、単極誘導モーターの原理により弾かれる力が大きいのは火花放電が起きない場合であることに一定の合理性が得られる。 むしろ、統計処理を用いた判定のために、振れ幅の平均を求めることは「生じる力の数値化」に弊害となると考えた。現象を正しく捉えるためには、火花放電が起きていないときの当該測定座標で最も大きい値をとることが必要と判断した訳である。 しかしながら、井出治氏のエーテルエンジンと単極誘導モーターに生じる力の類似性が理論上どのような関係にあるかは今のところ判明しない。 実験2で示した銅円板の回転を水銀に置き換えて生じる渦を観察することにより「磁極方向に沿っての分布」の様子を観察できるようにしたものが実験7である。 実験7 また、拙著論文から予想されることについて、単極誘導モーターに生じる力の強さは、磁石の質量に比例するはずであった。 これを検証したのが実験6である。 実験4の装置を用いて、ネオジム磁石(小)とアルニコ磁石(中)アルニコ磁石(大)の三種類について、単極誘導モーターに生じる力の最大値を比較した。 グラフ3の左、ネオジム磁石の磁極端面での最大磁束密度は576mTであり、右側のアルニコ磁石(大)の250mTの2倍以上あるにもかかわらずスズメッキ線が弾かれる強さは、アルニコ磁石(大)の方がネオジム磁石のおよそ1.7倍である。 磁束密度より質量に比例する傾向にあることが読みとれるし、実験6の条件として磁石中央部分での強さを計測したものであるから磁束密度には関係しないといえる。 結論として、ファラデーの単極誘導モーターに生じる力の強さは、 5.磁石の中央部分(磁束密度がゼロ)、重心付近が最も強い。 6.磁石の質量に比例する傾向にある。 まとめると ファラデーの単極誘導モーターに生じる力は
ここに掲載した実験は、いつ、誰が、どこで行っても同じ結果が得られる。 また、統計処理を行うことも不必要なほど明確な結果を得られる。 材料と電源があれば中高校生にも再現できる。 但し、水銀は現在入手が不可能と思われる。仮に入手可能であっても水銀の取り扱いと、廃棄に注意する必要がある。自己の責任で行うこと。 なお、単極誘導による起電力(発電)も同様の事情にあると考えているけれど、検証はしていない。 接点あるいは接触する面で何か起きているのか? ところで、実験の結果、ファラデーの単極誘導モーターに生じる力は、2.接点や接触する面で起きる、または極近傍で起きる。 このような現象には概ね次のようなものがあげられる。
実のところ、接触する面で何が起きているのかは、常識と思われることでも、意外と分かっていない。例えば、次のとおりである。 金属を切削する機械に旋盤がある。金属部材を夾んで回転させ、バイトをあてがって削る。同時に切削油をかける。切削する金属とバイトのチップに切削油が入る。熱を生じるので切削油が熱を奪う効果があることは理解できるし。しかし、金属とバイトのチップが接触する面に油が入ることで何故良く削れるのか。金属とチップ先と切削油の間で何が起きているのかをキチンと説明できる人はなかなかいないと思う。 経験としてうまく削れるとしか分からないのではないか。 砥石に水を使うのは何故か。古代人は鹿の角を削って釣り針を作ったという。この加工にも水を使ったという。経験的に知っているだけで、本当はよく分からないのではないか。 結論的には、磁石は超巨大な単原子であり、磁石の重心と接触面にある自由電子の相互作用として、接触面に力が生じているようだが、その仕組みはよく分からない。 予想では、接触面にある自由電子には距離の七乗に逆比例する力が働いていると考えている。その仕組みを理解しようと努力している。 今のところ、5.カシミール効果と6.弧の力の間には、ゼータ関数を媒介とする、何か関係があると考えている。 追記 実験8 上記、一連の実験の結果を総合した上で得た結論であるけれど、分かりにくいことに変わりない。そこで、実験4並びに実験7で得られた結果を、直接検証する実験8を行った。 ご覧の通り、円柱状のアルニコ磁石(Φ20×150o:カタログ値、磁極端面で250mT)を用いてファラデーの単極誘導モーターを作って試したところ、やはり両磁極の中央部分で生じる力が最も強いことが分かった。 得られたデータが綺麗でないのは、接点の接触が安定しない故である。また、適切な工作機械がないから、実験装置の精度が低いことも原因であるけれど、結果は明らかである。再現性に問題はない。ご意見やご質問等があればメールあるいはブログにてお願い申し上げます。 随時、加筆修正することがあります。 2014/03/11 更新 |