誰も当然のこと営んでいる日常生活は「力の相互作用」で成り立っています。 よく知られているように基本相互作用は、以下の4種類あります。
- 核力である強い相互作用
- 核力である弱い相互作用
- 電磁相互作用
- 重力相互作用
の4つです。 そのうち電磁気における相互作用の現象を2回に分けて取り上げます。 今回は「電磁誘導における相互作用」について記し、次回に「単極誘導における相互作用」を取り上げます。
.
動画1 電磁誘導における作用と反作用(2014年10月17日)
は、電磁誘導での力学的作用と反作用を示したものです。
のように、永久磁石を上から吊り下げたコイルに出し入れします。 磁石の往復運動によりコイルを貫く磁力線が時間的に変化します。するとコイルに誘導起電流が流れ、隣のガルバノメーターの針が振れます。
動画1のように、磁石の往復運動をコイルの揺れに同期させることができます。これは磁石の運動エネルギーが磁力線を介してコイルに伝わるからです。コイルに伝わった運動エネルギーの一部がコイルに誘導起電流を生じさせるのです。この実験について、力学的な相互作用を含むエネルギー収支を考えて、等号を用いて表すと、概ね
磁石の運動エネルギー=コイルの揺れ運動+誘導起電流 ・・・・式1
といえます。 ただし、コイルの揺れ運動には、吊り線の機械的抵抗と空気抵抗並びに銅線の内部抵抗による損失なども含んでいます。 磁石の運動エネルギーの一部が誘導起電流に変換されたといえます。 ここで大事なのは、永久磁石とコイルを含む実験系は、力学的な相互作用機構に含まれているということです。
ここで、物質の磁性について記します。(注:以下は管理人の理解ですので、厳密でありませんし誤りがあるかも知れません。ご指摘いただければありがたいです。)
写真1で用いた永久磁石はネオジム磁石です。ネオジム磁石はオネジム、鉄、ホウ素を主な成分とする希土類磁石です。
すべての物質は物性として「磁性」を持っており、常磁性体、強磁性体、反強磁性体、反磁性体に分けられます。この性質は
の様に、磁石を近づけたときの反応の仕方により区分されます。 物質の磁性の主な原因は
図2 磁性の源は電子にあるより
の様に、物質を構成する原子の中の殻電子の配列により決定します。上記サイトより引用。
そもそも物質が磁性をもつ原因は、物質中の電子にあります。高校の化学で習った原子の構造を思い出してください。原子核を中心にして、そのまわりを原子番号に等しい個数の電子が回っています。もっと詳しく見ると、電子は右回りか左回りに自転をしていて、これを「スピン」といいます。量子力学的には、右回りの電子を「上向きスピン」、左回りの電子を「下向きスピン」と呼びます。上向きスピンと下向きスピンは、お互いを打ち消し合いますが、打ち消す相手がいない場合、その物質は磁性をもちます。例えば、鉄の中のFe原子は26個の電子のうち、平均として上向きスピンが約14個、下向きスピンが約12個あり、差し引き約2個、上向きスピンが多く存在します(図2)。(注:図番号は管理人が変更)
量子力学では、物質は「質量を持ち大きさがゼロで位置を持つ」いわゆる質点とされます。電子のスピンといっても、何かが回転しているわけでないとされます。なぜなら大きさがゼロの質点が「回転」することに意味はないからです。「スピン」は数学的な演算子だとされています。
基本相互作用の話に戻ります。動画1の実験は、電磁相互作用の一例です。電磁相互作用を起こすのはゲージ粒子である光子(フォトン)だとされます。
物理学は、近接作用で組み立てられています。 動画1の実験において、式1の右辺、誘導起電流は磁石を構成する原子にある殻電子とコイルに存在する電子の相互作用だと解釈されます。つまり、上記の
- 磁石 と コイル の力学的な相互作用は
量子力学的な解釈として
- 電子(磁石の殻電子)と電子(コイルの銅線内電子)の間における光子(フォトン)のやりとりである
わけです。 繰り返しますと、光子(フォトン)は電磁気的な「力を伝達する粒子」ですから、磁石とコイルの間に力学的な作用と反作用が生じるのです。 光子(フォトン)は、電気力、磁気力も含むすべての電気磁気現象の担い手だということです。(近接作用として力を伝える粒子)
上記の電磁誘導の相互作用は
の様に示せます。 磁石とコイル間の相対的な運動により、磁石を構成する原子の殻電子(の内ペアを組まない電子)とコイルを構成する原子間に存在する導体内を自由に動ける電子が光子(フォトン)を吸ったり吐いたりすることによって(力を伝達する)というイメージです。 (注:へたくそな図3で申し訳ないです。)
もう一度繰り返しますと、動画1の実験は、電子-電子間の相互作用だということです。その力の担い手が光子(フォトン)ということです。 次回は、単極誘導における相互作用について記します。
ブログランキングの応援と広告のクリックをお願いします。