2013年から2015年にかけて主に 単極誘導モーター に生じる力について調べました。 当ブログでは、かなりの数の実験について内容や観察・考察の結果を記してきました。その間「ローレンツ力」という言葉をほとんど使ったことがありません。その理由を記します。
単極誘導モーターに生じる力について実験で調べるに至った経緯は、だいたい次のようです。
- J・C・マクスウェルは、主にマイケル・ファラデーが行った電磁気現象に関する実験の結果を20の変数を持つ20の方程式群(原方程式)にまとめた。(原論文:A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field)
- ヘビサイド、ギブス、ローレンツ(Lorentz)などによって原方程式は、4つのベクトル形式の方程式にまとめられた。これが現在のマクスウェル方程式と呼ばれるものである。 出典:マクスウェル方程式より
- トーマス・ベアデンの書簡によれば、原方程式から極端に単純化されたために、何らかの要素が失われたとされている。
- マクスウェル方程式からは、「電磁誘導とファラデーの単極誘導」に関する方程式が得られる。起電力は、右辺第1項で電磁誘導、第2項で単極誘導は得られる。 式1 参考:The principle of monopole induction(単極誘導の発電原理)
- 単極誘導モーターに生じる力はローレンツ力により説明される。図1 出典:受験のミカタ
- ヘビサイドやギブスらによって原方程式から一旦は消されたベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルについては、量子力学の発展とともに見直されるようになった。
- ベクトルポテンシャルは、(電場がないだけでなく)磁場の漏れがないところでも電子(波)に作用すると考えられた。(アハラノフ・ボーム効果)
- 2000年頃、外村彰氏による実験によって、磁場がないところでも電子(波)は作用することが示されたことから、ベクトルポテンシャルが物理量と認識されるようになった。(参考:電子波で見る電磁界分布)
- 上記の経緯に関しては、黒月解析研究所サイトの「1864年のマクスウェル方程式にあるローレンツ力には…」並びに「1864年のマクスウェル原方程式について」他をご参考に。
- ところが、1~8に示す方程式について、いずれも「古典力学的な作用と反作用」に関してうまく表現されていないと感じた。(自明のこと?自分だけが理解していない?)
確かに、ローレンツ力を用いれば円運動はわかりますが、何処と何処の間に力が働くのかよく理解できません。トム・ベアデンの主張を信じるなら、むしろ意図的にぼかしたのかとさえ思います。 そこで、主に単極誘導モーターに生じる力について実験で確かめようと考えました。
何処と何処との間に力が生じるのかを幾つか実験で確かめていく内に、何とも表現しがたい感覚がありました。 本当にローレンツ力で説明が付くのかな、と。 一つの実験に対する感想と意見だけでは理解しがたいです。 管理人の意見(仮説)を云うと、次になります。
電子の挙動としては、電磁誘導で説明できるが、電子と例えば磁石を構成しているプラス電荷を持つ原子核(陽子)との相互作用も外部に漏れ出ているのではないか、ということです。 陽子が原子核内部に落ち着いているのは、核力によるとされます。理解は出来るのですが、陽子が電子と同じだけ電気量を持っているのですから、普通の環境下においても陽子の電荷にかかる影響は物質外部に現れてもいいのではないかと感じます。つまし、原子は電磁気的な意味において、陽子と電子の組み合わせにて安定しているようでも、その差分が外部に出ているのではないだろうか。
この発想は一連の実験を行って行くにつれて、出来たものです。過去の記事について、単極誘導で検索いただくと多く出てきます。(勿論のこと、過去の実験のやり方や結果、並びに考察について、様々な疑義があることは理解しています。)
古典電磁気学は、物質の内部に核があるということがわかる前に成立した学問です。とても重要なことです。現在、原子核物理の分野や核磁気共鳴の現象などが研究されて、実用に供されていることは存じていますが、古典電磁気学は電磁気現象の半分以下の領域しかカバーしていないのではないかと感じます。何時かの時点で拡張すべきだったのではと考えます。
単極誘導モーターに生じる力が磁石にある磁場(磁力線・磁束線・磁界?)と周囲を運動する電子との相互作用によるならば、「磁力線は磁石にくっついているの?」という疑問に行き当たります。一般科学参考書(続 間違いだらけの物理概念 (パリティブックス)や電場・磁場 (物理学One Point 2))にも取り上げられています。しかし、どれも納得のいく説明ではありませんでした。これらの本や資料に書いてあるのは以下の3つ説明です。
- 磁場は磁石に固定されている
- 磁場は空間に固定されている
- そのいずれでもない あるいは「そんな議論は無意味だ」
参考書の「続 間違いだらけ」では3.を「電場・磁場」では、2.だと指摘しています。ただ、いずれも方程式や数式の解釈による物で、実際に行った上での解説ではないだろうと思います。
2017年9月9日に記した「電磁誘導とローレンツ力はなぜ同じ起電力を与えるか~ とね日記よりメモ」は、その気持ちを後押しするものでした。 「ファインマンも解けなかった問題を解明」のページより「研究の背景」から引用します。
磁場を横切る導線に生じる誘導起電力の計算は、高等学校の物理の教科書にも載っており、大学入試問題にも頻出する問題です。この誘導起電力は2つの方法で求めることができます。一つは、ファラデーの電磁誘導の法則を使う方法、もう一つは、ローレンツ力を使う方法です。ファラデーの電磁誘導の法則とローレンツ力は全く独立な物理法則です。それなのに、どちらを使っても同じ答えが得られるというのは不思議です。しかもその理由は、これまでわかっていませんでした。例えば、砂川重信著『電磁気学』(岩波全書)の212ページには、以下のように記述されています。「このように、その本質のまったく異なる二つの法則が、一つの法則として(1.1)のようにまとめて表現されたということは、現在のところ偶然のいたずらとしか考えようがない。」同様の記述は、世界的に著名な物理学の教科書『ファインマン物理学』にも見られます [1]。この奇妙な一致を解く鍵は、量子力学と、ゲージ場としての電磁場にあります。20世紀の初頭に古典物理学の限界が明らかになり、量子力学が誕生しました。量子力学では、電子の運動は波動関数によって記述されます。また、電磁場で基本的な物理量は電場や磁場ではなく、ゲージポテンンシャルであることが外村らの実験で確立しました [2]。これにより、電磁場の本質的な理解には、電場や磁場ではなく、ゲージポテンシャルを用いる必要があることが明らかになっていました。
上記を要約し、箇条書きにします。
- 誘導起電力は2つの方法で求めることができる。
- ファラデーの電磁誘導の法則を使う方法
- ローレンツ力を使う方法
- ファラデーの電磁誘導の法則とローレンツ力は全く独立な物理法則
- なのに、どちらを使っても同じ答えが得られる
物理学者のファインマンでもわからなかったことを、量子力学で解き明かしたとのことです。でも何かが違う。電磁誘導と単極誘導の現象は、似ているけど本当は異なる物理現象ではないのかと。
ここからは、個別の実験のお話です。
2015年から2017年にかけては、別の方面に関する考察を続けてきました。約1年前、動画サイトに掲載した水銀を用いた単極誘導モーターに生じる力についての動画に対してコメントを頂いておりました。
動画1
はっきり言って、わかりません。現在、コメントは返せておりません。コメントの文意を読み取れていません。
水銀に対する磁束の向きは、それぞれ1.磁石の内側、2.磁石の下部分3.磁石の外側の3つにわかれます。ですから電流を通す銅板で水銀を仕切ることによって、同軸二重反転や三重反転の単極誘導モーターが出来ます。しかし、それをトルクと呼ぶならば、何処と何処の間に働くトルクを云っているのでしょうか。また、上記の逆トルクというのは何なのでしょう?
丁寧に読んでいくことにより、何となくわかってきます。前提として、水銀を含む電流経路には、逆起電力が生じていることは確かです。これはよく分かりません。
ローレンツ力を考えます。ローレンツ力は電流(電子の向きの反対方向)が流れている水銀と磁石との間に働きます。(一般に認められていることと認識します。これがそもそも勘違いか?)
動画1において水銀が磁石に接しているのは、磁石の下半分です。水銀に浮かんだドーナツ状の磁石が持つ磁束の向き(図1による正確な表現は磁束密度Bの向き)は中心から「上・下・上」となります。(N極を上とします。)
図2
するとローレンツ力により電流経路である水銀と磁石の間に働く力は、これらを放射状に合成したものとなるはずです。この合成した力が、動画1のモーターをして磁石は水銀の流れ(渦)のままに回るのでしょうか?
図1のように左手を図2の3つの場合(ドーナツ型磁石の内側・下面・外側)に当てはめて考えます。ただし、図1の設定の通り、電荷が正の場合として考えます。
- 磁石の下面に位置する水銀には、順時計方向、磁石には反時計方向に力が働く
- 磁石の内側に位置する水銀には、反時計方向、磁石には順時計方向に力が働く
- 磁石の外側と外側電極との間に位置する水銀には、反時計方向、磁石は時計方向に力が働く
と理解できます。これは三重反転のときに起きる水銀の渦方向とおなじです。仕切り板が無い場合は、3つが合わさった乱流になることを観察しています。特に磁石の内側にある水銀は電流を流した瞬間には、とても乱れた複雑な動きをします。
磁石を手に持って水銀の上に近づけた状態にあるときは、指が3つの水銀の流れによる反作用を受けているはずですが、指先を離してからどうでしょう。一番流れが強いのは磁石の下面に位置するときですから、3つを合成した結果、(最初は乱れるもののすぐに)時計方向の渦になるものと考えられます。 しかし、ローレンツ力では反作用を磁石が受けているとの想定ですから、水銀に浮かべた磁石が3つの水銀の流れを合成した渦に合わせて順時計方向に回るのは理解できません。 水銀と弱の質量に応じた反作用によって、磁石は反時計方向に回るような気がします。
コメントでは、ローレンツ力による力と水銀に流れる電流による逆起電力(原因となる逆トルク)が生じることで、水銀の渦と同じ順時計方向に力が働く、これが逆トルクだということだろうと思われます。結果としては、水銀に浮かんだ磁石は水銀と同方向に回ることから、あたかも磁石が力学的に孤立しているように見えると述べられているように思います。 読解力が無くて、これ以上は読み取れません。 逆トルクの意味も仕組みもよくわかりません。
幾つか状況証拠と考えられる実験はありますが、実際にやってみないとわからないと感じます。 ここに来て、管理人の勘違いであるかも知れないとの思いもありますけれど、ローレンツ力という言葉を使って説明するにはとても抵抗があります。逆起電力により生じる力を考慮しようとしても複雑すぎて飲み込めません。
上記の「3つ説明」の内、管理人の意見は、「磁場は磁石に固定されていないし、空間に固定されてもいない。そのいずれでもない」です。 電子の挙動に関することですので電磁気学の範疇ですけれども、単極誘導モーターにかかる現象は磁場に関係しないのではないかと思います。(単極誘導による逆起電力に関しては、何とも云えません。)
ここまで書いて、「単極誘導 逆起電力」で検索しました。結果、ファラデーの単極誘導 / 単極モーター の実験というサイトに揚げられた文献があります。「【文献】中川雅仁:単極モーターの動作原理,日本物理教育学会誌「物理教育」Vol.55, No.2, pp.141–144 (2007).」というものです。日本物理教育学会のサイトに「刊行物について」があります。その中にpdfにて2007年のVol.55, No.2概要がありました。一部引用します。
単極モーターの動作原理について,理論的な考察及び計算を行った。特に,単極モーターの反作用は磁石に働くという誤解を解き,その上に立った解釈を与えた。すなわち,磁石(と流れる電流)の磁場により単極モーターの金属板部分に回転軸まわりの力のモーメントが働き,それによって回転するが,磁石には,金属板や導線に流れる電流からの力のモーメントは働かない。導線部分には金属板部分に働く回転軸まわりの力のモーメントと,大きさは同じで向きが反対の回転軸まわり
の力のモーメントが働く
当該資料を「学術情報データベースCiNii」にて検索しましたところ、別のところ(J-STAGE)にあることがわかりました。「中川雅仁:単極モーターの動作原理」 単極誘導に関する逆起電力とは書いていませんけれども、管理人の実験による結果と同じになることを理論的に説明しています。 今のところ、単極誘導モーターにかかる逆起電力は、どのように生じるのか勉強不足でわかりません。
失念していました。過去記事を「中川雅仁」氏で検索すると4件出てきます。ご参考まで。
2015年6月9日 「導線には、円板に回転軸まわりの力のモーメントと、大きさが同じで向きが反対の力のモーメントが働く」という論文
2016年6月10日 磁場は空間に固定されているか
2016年6月12日 ”電磁誘導”と”単極誘導”とは異なる現象である 「より高い対称性について」
2016年6月15日 接触:「接する」とは何か?接点で何が起きているのか?
参考:ファラデーの単極誘導とNマシン ←元のURL(http://www.asahi-net.or.jp/~JC5M-OOTK/elec/uni_induction.html)
よくまとまらない記事となりましたけれど、『【文献】中川雅仁:単極モーターの動作原理』の説明どおりの実験結果であるからと云って、管理人は「ローレンツ力により説明し終えた」、すべてOKだとは思っていません。
2013年7月1日から3日にかけて行った実験を示します。 ご存知の通り、実験は教科書のようにすっきりしない結果をもたらすことが多々あります。観察の結果をどのように判断するかも個人により異なります。
実験装置は、アルニコ磁石を用いています。 装置は電磁誘導により生じる力と単極誘導モーターとして生じる力を導線の弾かれる強さとして測ります。
写真1 装置の接点部分
スズメッキ線は銅で作った接点に触れることで電流が流れるようにできています。実験の様子は次の動画にて確認できます。
動画1
アルニコ磁石(直径15ミリ、長さ150ミリ)と接点の位置をアルニコ磁石をスライドさせることにより変えることができます。アルニコ磁石の位置よって弾かれる強さと弾かれる様子を観察しました。
GIF1
は、スズメッキ線がS極端面から10ミリ離れた位置(-10)での弾かれる様子です。弾かれる強さと様子を観察した結果を箇条書きにします。
- スズメッキ線は銅片に接して電流が流れたとき、火花放電の有無によらず弾かれる強さに強弱は観られない。
- スズメッキ線は銅片に接して電流が流れたとき、撓たわみながら弾かれる。(力は回路:電流路に生じている様に見受けられる。)
次にS極端面から75ミリの位置(端面から+75:棒磁石中央部)での弾かれる様子です。
GIF2
- スズメッキ線は銅片に接して電流が流れたとき、火花放電が無い場合の方が火花放電が起きたときの方より弾かれる強さは大きい。
- スズメッキ線は銅片に接して電流が流れたとき、撓たわむ様子は観られない。スズメッキ線は棒状のまま弾かれている。(力は接点で生じている様に見受けられる。)
観察する限り、磁極端面と中央部での様子はかなり違います。中川氏が論文で示したような、「導線部分には金属板部分に働く回転軸まわりの力のモーメントと,大きさは同じで向きが反対の回転軸まわりの力のモーメントが働く」のと様子は異なります。
つまり、中川氏が示したとおりならば、単極誘導において力(のモーメント)は回路(電流路)に生じると解せますので、GIF2においてもスズメッキ線は撓みながら弾かれるはずです。また、火花放電の有無による違いも無視できません。
ローレンツ力で説明が完了するとは思えません。現時点での疑問です。
- 単極誘導モーターにおける逆起電力は、どのように働くのだろうか?
- JPモルガンが消したかった部分とは何なのか?
- ヘビサイドが発見したという(電気力の1兆倍だとされる)「巨大な回転性電磁気エネルギー流」とはどのようなものだろうか?
- 外村彰氏の実験において、残ったのはベクトルポテンシャルだとされるが、本当にそうなのだろうか?
- 管理人が見つけた発散トーラスは、「距離の7乗に逆比例する力の場」である。その形状は非対称で電気と磁気を融合した極めて強い力の場という仮説である。発散トーラスはヘビサイドの発見と関係するのだろうか?
なお、発散トーラスの形状と性質は2017年5月24日「発散トーラスの性質について」を参照ください。
発散トーラスの3DCGモデル
追記1/9 当該記事は、既に書いたことのまとめに近いです。また過去に書いたことながら。学生の頃、電気工学科の人から言われたことです。「放電現象には今でもわかっていないことがあると教授が言っていた。」 (電磁気現象を)わかりきったこととして、古典電磁気学に押し込めたままに量子力学から素粒子物理へ進んでいっては、抜け落ちたままだと思います。 物や事について、極度の抽象化には反対です。
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