前回までにご紹介したカルロ・ロヴェッリ著(以下、著者という。)の「 時間は存在しない 」から興味深い点を読みます。
写真1
『カルロ・ロヴェッリ著「 時間は存在しない 」について その6』の中で引用した子どものための量子場にかかる図を眺めていて気付いたことです。
図1 出典:A Children’s Picture-book Introduction to Quantum Field Theory
この模型では、バネを付けた小さな球が互いに連結しており、揺らぎによって量子(粒子であり波動である物性を持つ。)が生じる場を模しています。
著者が本で述べていることの一つの大凡をまとめると以下になります。
- 量子場は言語規範と同じくネットワークである。
- 量子場の方程式は、物と物との間の関係を説明する。
- 世界は物と云うより物と物との間にある関係、即ち(出来事)により成り立っている。
- 出来事のネットワークは、より単純な出来事に分解できる。
- 複雑な出来事は、量子場のネットワークが織りなすと考えるとうまくいく。
- ネットワークは、「外のない世界」である。
その上で著者は云います。
わたしたちはずっと、この世界をある種の基本的な実体の観点から理解しようとしてきた。物理学はほかのどの分野よりも熱心に、それらの基本的な実体の正体をつきとめようとしてきた。だが調べれば調べるほど、そこに「在る」何かという観点ではこの世界を理解できないように思えてくる。出来事同士の関係に基づいたほうが、はるかに理解しやすそうなのだ。
著者の主張を管理人なりにまとめたのが前回までの記事です。
- 物質的自然も言葉も言葉を用いる人の思考のすべては循環である。
- 循環とは互いに規定しあって成り立っているネットワークである。
- 従って循環は、自身で閉じており「外のない内」である。
- 従って、必ず閉じている孤立系である。
このまとめは、数学者岡潔の述べたことと整合しています。 以上を模型としたのが図1のようです。この図を眺めていて気付いたことです。
子どもたちに量子場を説明するこの模型は、以前に管理人が当サイトで発表した模型に似ています。というより著者の主張をより忠実に説明することができます。その模型は二層型スターラーです。2018年12月14日「二層型スターラー の 渦 について」を参照ください。
写真1 自作のスターラー
写真1のスターラーに青に色づけした水とグリセリンを半々に入れます。水はグリセリンより比重が大きいので水が下になり、上にグリセリンが来ます。 スターラーを回すと次のようになります。
gif 1 逆さの渦
gif 2
gif 3 凹の渦
この模型で云うならば、水とグリセリンの境界面が「場」です。量子場は境界面ですから何もありません。この二層型スターラーでは、逆さの渦ができるだけですけれども、このときの境界面は静止時より下がっています。で、著者の云うところの「量子場は言語規範と同じネットワークであり、外のない世界」というのは次図になります。
図2 スターラーで反対方向に2つの渦ができる様子
境界面である 量子場 には何もありません。場の揺らぎによって、粒子であり波動である量子(素粒子群:ソリトン)が生じます。このとき「量子は必ず対」になります。注:素粒子が持つ物性である各種の対称性も対であるといえます。
図2では、「+」と「-」と表記していますが何でもよいです。例えば「正と負」、「上と下」、「右と左」、「1」と「0」、「水」と「グリセリン」でもよくて、はたまた「善と悪」、「神」と「悪魔」など何でもOKです。著者の云うように「物」には何の意味もありません。「+」とは何か?と問われたら「-」でない物と答え、「-」とは何か?と問われたら「+」でない物と答えるしかありません。互いに規定しあって成り立っているからです。これは循環であり、著者の云うネットワークです。だから、「外のない世界」なのです。これが言語規範と同じということです。
岡潔は次のように述べています。「【6】 数学の使えない世界」を参照ください。
- 自然数の「1」は決してわからない。
- 数は量のかげ。
これで岡潔の云った意味がわかります。過去記事にあるように、2進数に限れば「1」とは何か?と問われたら「0」でない数と答え、「0」とは何か?と問われたら「1」でない数と答えるしかありません。 そして、数とは何か?と問われたら、数とは量のかげです。詳しくすれば「数は物の量のかげ」です。物とはこの場合においては量子です。
この凸凹の関係は、数学を含む言葉と言葉による思考のすべてに通じるものであることがわかります。だから、自然科学は循環であり孤立系の科学なのですし、第1の心もまた循環であり孤立系なのです。時に人が第1の心を病む原因がここにあることは明白です。
因みに二層型スターラーをつくったのは、「境界面に生じる」ということを説明したかったからです。その前の段階の模型が二層型の浮沈子です。
動画1
二層型の浮沈子より前の模型が一円玉とアルミ箔を用いた「引力と斥力」の動画です。
動画2
すべて同じ考え方の元に作っています。著者は「時間変数を含まない方程式を作った」としますが、「光速度c」を基準にしているはずです。光速度は時間を使わねばわかりません。ですから、時間と光速度の両方を使わない方程式を作らねばならないと考えています。そうすれば、著者の残した疑問に答えることができると考えます。
少しずつ詳しくなってきています。
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