筑波大学の論文『ファインマンも解けなかった問題を解明 ~ファラデーの電磁誘導の法則とローレンツ力はなぜ同じ起電力を与えるのか~』への疑問

2017年9月に筑波大学による電磁気学に関する記事『ファインマンも解けなかった問題を解明 ~ファラデーの電磁誘導の法則とローレンツ力はなぜ同じ起電力を与えるのか~』を読んで、感想を書いて以来、幾つかの関連記事を書きました。当サイトを「ファインマン」で検索すると9件の過去記事があります。この論文の主旨は、かいつまんで説明すると以下です。

  • 『古典電磁気学で見られた2つの本質的に異なる方法での奇妙な一致』を「電子の量子状態を表す波動関数の位相因子の2重性により繋がっていた」とわかった。

まとめると、古典的に2つの方法があるのを量子力学で波動関数による2重性に置き換えただけです。これでは、まったくわかった感がありません。過去記事を幾つかあげます。

これまでの記事をまとめると2点の疑問があります。

 

1.確かに単極誘導は、ローレンツ力として説明は出来ます。

図1

その結果として、電子は磁場に垂直な平面内で等速円運動をします。

図2 出展:ローレンツ力を慶應生がイラストで丁寧に解説!円運動との関係も!

ところが前に説明した通り、何処と何処に力が働くかの説明が抜けていますし、本質的な回転運動であるという特徴が削除されています。

単極誘導について、ベタな表現ですが 大事なのは「回す」ではなくて「回る」運動であることです。ローレンツ力を解説している人たちも実際に実験で確かめた人は皆無だろうと感じます。教科書で学んだだけでわかったつもりなのがよくわかります。「回る」とは、回転させる機構が不要な運動のことを示します。対して、電磁誘導は往復運動ですから回転運動に変換する機構が絶対に必要です。

写真1 出展:ニコラ・テスラ

有名なニコラ・テスラは次の言葉を遺しています。

「空間はエネルギーで満たされている」

この確信をテスラは死ぬまで、一貫して持ち続けていた。例えば、千八百九十五年の発言を見てみよう。

「われわれは終わりのない空間を、想像もつかない速度で渦を巻いて回転している。すべては回転し、運動している。すべてはエネルギーである。このエネルギーを直接、手にする方法があるにちがいない」

そして千九百三十六年、八十歳の誕生日を迎えたテスラは確信を持って断言する。

「何世代もしないうちに、人類は空間の中で好きな所からエネルギーを取り出すことができるようになるだろう」

かの天才が本質的な回転運動に注目していたことは間違いないです。そして、電磁気学に関する彼の印象が以下です。

十八年以上の間、私はヘルツ波の理論に関する学位論文、科学レポート、記事を読んで多くの知識を吸収しようとした。しかし、それらからいつもフィクション作品のような印象しか得られなかった。

その原因が電磁気学をして「力学的特性を極力排除」し、「単極誘導をローレンツ力と言い換え」て「単極誘導が持つ本質的な回転運動を隠そうとした点」」にあると確信します。要は単極誘導の実験を真剣にやったことがないから誰も気づかないのです。

 

2.冒頭の筑波大学の論文で「古典的に2つの方法があるのを量子力学で波動関数による2重性にとして説明できる。」としたことについてです。

一般に量子力学での説明は、ミクロの長さでの領域に起きる現象に適用できますが、マクロに現れることは稀です。

例えば、江崎ダイオードで知られるトンネルダイオードは、ミクロな量子効果(トンネル効果)がマクロなダイオードの(負性抵抗)として現れます。

図3 長さのスケール 量子力学が適用できるのは10-10mくらいから小さい領域

ミクロな量子効果(波動関数の位相因子にかかる2重性)で説明できるからと言って(どのようにして)マクロな電磁誘導とローレンツ力として現れるのか別途説明が必要だと感じます。電磁気現象は見てのとおり数ミリから数十センチ、あるいは雷など百メートル以上も放電する現象です。それらの現象と波動関数の2重性とどういった関係にあるのか理解できません。

ですから、波動関数の位相因子にかかる2重性により「1つの起電力に2つの誘導現象がある」ことの説明にはなっていません。言い換えると「量子力学はマクロの現象に適用できるのか」です。これでは、この論文が謎を解明したとは言い難いです。だから、わかった感がないのです。教科書を学んだことでわかったつもりになっているだけです。やったことがないから実はわかってないです。

 

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Φ について

2010年より研究しています。
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